インボイスで得する人はいるのか?問題ばかりの消費税制度!

インボイスが始まって1ヶ月が経ちました。
皆さんの周りでも経理業務をしている人がいるかと思いますが、社員の経費精算や請求書業務をする度に確認事項が増え、実質業務時間が増えていることでしょう。
もちろん従業員も領収書をもらう度にインボイスであるかどうかを確認しなければなりません。
インボイス登録している会社ではそうでないと受け付けてもらえませんよね。
しかもまだ理解が深められていないこともあり、ミスも多く出ていると思います。
インボイスによって約2480億円の税収が増加すると試算されています。
2023年度予算では消費税の税収は年間23.4兆円。
インボイス導入によって増える税収は消費税税収全体の1%程度といいます。
それなのにインボイス導入に関わる作業時間、それに関わる人件費などは激増です。
今回もどうにも納得できないインボイス制度について話していきます。
インボイス導入に関わる手間はどれくらい?
10月に入ってから、皆さんの仕事量はどうですか?
増えていませんか?
会計管理ソフトを提供しているLayewXの調査によると、請求書の支払作業1件あたり15分、経費精算処理は5分増加と見ていて、経理1人あたりは月に1〜2分増加し、経理以外の従業員は月に約7分増加、そこから計算すると日本全体、月間1.4億時間の負担が増えたといいます。
ここから人件費を算出すると、月3,400億円のコスト増で年間は4兆円の負担になっているといいます。
つまり国の2480億円の税収増しのために、4兆円も負担増になっているということ。
しかもこの負担は、税金を納める我々が負担させられると言いう事なのです。
仕事をしている人全員にかかってる負担は確実に増えて、その割にはその効果を感じないという、どう考えてもおかしい話ですよね。
引用元:
https://news.yahoo.co.jp/articles/4901ce5f1c594734260f5edae15c622e01e7652b
消費税の不思議
消費税は年金、医療費、介護など将来の高齢化社会から起こるあらゆる問題と少子化対策などを見据えて、財源をどこから取るかという建前で始まりました。
もちろんそれは表向きな理由です。
消費税が社会保障に全て使われているかの確証もありません。
一般財源ですから用途が限定されない仕組みです。
以前の記事でもお伝えしていますが、医療費も年金も私たちの負担は増えています。
消費税が増えた分、そこから賄ってくれているのならまだ納得ですが、消費税を払い、しかも医療費や年金の支払いなども増えているのです。
どう考えても意味がわかりません。
そして、消費税の目的が社会保障という説明は国民が一人一人に関わってくることなので、それなら仕方ないよね…と納得させられてしまうことにもなるわけです。
常に思いますが、国民はずいぶん馬鹿にされています。
さて、消費税は平等ではないのですが、今回はそのことについては置いておきます。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、売上税導入が頓挫した代わりに1989年に消費税が導入されました。
そこからはご存知の通り、30年間に3%から10%にまで増えています。
導入当時は年間売上が3,000万円までの場合は免税事業者になっていました。
免税事業者にとっては大変助かる話で、消費税を払わなくてもいいので何とか経営が成り立っていた会社が多かったのですが、2004年には免税事業者の条件が年間売上が1,000万円に下がりました。
年間売り上げ1,000万円以下の企業やフリーランスにとって、社員を数名抱えていたら、仕入れや経費を差し引くと決して楽ではありません。
正直、「良く倒産せずにやっていられるなぁ」というレベルです。
中小事業者にとって保護政策でもあったはずなのに、だんだん変わっていきます。
そしてさらに国内の取引には課税の他に不課税と非課税と免税があります。
不課税:元々消費税の課税対象にならない取引
非課税:本来は課税対象ではあるが、社会政策的に配慮されたものなど例外として税がかからない取引です。
例えば、
不課税は給与、寄付金、お祝い金、補助金、各種税金、株の配当金、国外取引
非課税は住宅(戸建、マンション、アパート)の貸付、郵便切手や印紙の譲渡、預貯金や貸付金の利子、行政の手数料、保険料、商品券、保険料、埋葬料、介護保険のサービス提供、学校教育などあります。
また免税の扱いもあります。
免税:商品の輸出の取引、国際郵送、国際電話、国際郵便などです。
この中で注目したいのが住宅の貸付と輸出の取引です。
住宅の貸付は当時バブルの時代に土地の価格が上がっていましたが、その上それに消費税が乗ると土地を買おうにも負担が増えすぎて、買い手もつきません。
そのため非課税になったのですが、この時まだ賃貸の人は消費税は払っていました。
それでは不平等ということで、1997年にやっと賃貸も非課税になりました。
このように時代の流れによって不都合が生じてくると見直しせざるを得なくなってくるのです。
また輸出業には消費税はかかりません。
以前の記事でも紹介していますが、仕入れは国内取引ですので、消費税がかかりますが、輸出商品の取引は消費税がかからないので、支払い消費税だけが発生してしまいます。
そのため輸出する企業に対しては優遇措置として輸出戻し税なるものがあるのです。
消費税増税の度に仕入れ先に値引きなど強引な取引をしているところもあるので、この優遇措置によって潤っている企業もあります。
このように辻褄を合わせようとして、その都度改正したり、優遇措置を出したりしている国ですが、実質、恩恵を得ているのは大企業であり、中小企業やフリーランスへの保護はどんどん減っています。
軽減税率が複雑にしている!
2019年に消費税が8%から10%になりました。
その時軽減税率と言って、国民の生活に密着している食料品となぜか新聞代については8%になりましたよね。
新聞は「思索のための食料や栄養源」という考え方だそうです。
当時も納得していませんでしたが、今もよくわかりません。
それならば、書籍もネットから情報を取ることも同じ意味合いであり、同じ対象になっても良いですよね。
私たちが納得するような答えを得られぬまま、国会での審議は進んでいきます。
そもそも、税率を複数にすること自体が、手間もかかり、分かりづらくなっています。
当時のレジシステムなど店側などの対応は大変でした。
そして軽減税率があるせいで、請求書や領収書に税率が書いていないとミスや不正も増え、正しく税が納められているのかもわからない。
正確な消費税額をと消費税率を把握するためにインボイス制度が導入されたと言うことになっています。
それが正しい目的ならば、そもそも軽減税率自体が問題ではないでしょうか。
この軽減税率があることで、インボイス導入後の経理処理もさらに面倒になってきたのです。
税率は別々に表示しなくてはならず、登録番号も正しく記載した国が決めたインボイスにしなければ、仕入れ控除対象にはなりません。
そのためにシステムを導入した会社もあり、手間もお金も莫大に増えたということです。
またインボイス対応の経理ソフトなどを導入していない会社ならば、取引先がインボイスを導入している会社なのか、そうではないのかをきちんと細かく確認しなければなりません。
どちらにしても複数税率があるせいでメリットよりもデメリットが目立っている状態です。
免税事業者切りが始まった!
インボイス制度が始まったことで、実際、スーパーへの委託販売をしていた小規模農家が取引中止になりました。
インボイスの登録をしていない中小企業やフリーランスの人などには切実な問題です。
小規模農家の方のようにインボイスを登録して消費税を払うほどの余力はなく、今まで通りに免税事業者としてやっていく人も多いと思いますが、今回はスーパーの取引中止の理由は「会計処理の負担を避けたい」ということでした。
スーパー側としても実質人手やそれに経費をかける余裕が本当にないのかもしれません。
でも免税事業者と取引した分については仕入れ控除はできないため、免税事業者との取引が多ければ多いほど、スーパー側の支払い消費税の額も増えていきます。
それは避けたいところで、これが本音かもしれません。
しかしそうとは言わず、実質インボイスが導入された所為で会計処理が…という説明だったのでしょう。
この件に関して、公正取引委員会では独占禁止法にはあたらないという回答だったそうです。
独占禁止法にあたらないという理由は次の三つです。
・取引先が価格を一方的に値下げ要求していないこと。
・極端に低い価格を提示してきていないこと。
・価格の値下げ要求を受け入れないと取引停止にするという通告をしていないこと
つまりあくまでもインボイス導入したことで会計処理の負担を大きく理由に挙げただけで、金銭的なことは何一つ言ってないのです。
金銭的なことで強気な対応をすると、公正取引委員会は指導に入り、それに対して対応しなければ、取引先が優位的地位の乱用ということで、最悪の場合、罰金刑や懲役刑にまでなるわけです。
でもこうした理由を言われれば、合法であり、小規模農家としてはインボイスに登録するしか方法はないかもしれません。
また発注する側からすれば、こうした手があったか!と取引を断る会社も増えていく可能性だってあります。
どちらにしても良くない前例です。
これだとスーパーが一方的に悪役のように映りますが、それを言いたいのではなく、こうした事例が起きることは想定内だったのですから、国がインボイスを導入したことに問題があると思います。
中小企業やフリーランスの人にとっては他人事ではありません。
取引先との関係は常にパワーバランスがつきものだからです。
そんな事情がわかっていて無策な国は弱者となる企業を切り捨てているとしか思えません。
参考にした資料:
https://www.agrinews.co.jp/news/index/190198
またある農家では直売所の運営会社から7月の段階で、インボイス制度の登録状況の確認の書面が届きました。
そこには直売所での販売手数料が書かれているのですが、インボイス発行事業者は今までと同じ20%、免税事業者には25%ということでした。
理由は明らかではありません。
直売所も消費税の負担が発生してしまうので、このまま損するのは嫌に決まっています。
そうなるとその分を手数料に上乗せした可能性は高いのです。
免税事業者との取引に対しては2023.10月から3年間、80%仕入れ控除ができます。
2026.10月から3年間は50%仕入れ控除ができます。
つまり6年間の特例があります。
こうした企業向けの経過措置もあるので、それを利用せずに免税事業者に対してただ消費税分をカットさせたり、消費税分の金額を転嫁すると公正取引委員会から指導されるという可能性も出ています。
どちらにしても難しい判断を迫られています。
https://www.agrinews.co.jp/news/index/184393
これからもインボイスに関して、会社のさまざまな対応が出てくることでしょう。
それに対して1年後、仕方なく免税事業者から課税事業者になった事業主が消費税を支払う時期になりますが、余裕持って消費税を払える会社がどれくらいいるでしょうか。
もしかすると、さらに消費税の滞納額が増えることになるかもしれません。
また、免税事業者は仕事を切られたり、値引きを言われて利益も大幅に減るというケースが増える可能性もあり、とても気になるところです。
これからさらに消費税も上がっていけば、廃業に追い込まれる会社も増えていくことでしょう。
本当にまだ見えていない部分も含めて問題山積です。
インボイスで得する人はいるのか?についての まとめ
いかがでしたでしょうか。
経過措置などが出てはいるものの、今のところはどれも期間限定です。
結局、免税事業者をなくしていこうという流れになっているような気がしてなりません。
加えて、いままで自分たちは関係ないと考えていた課税事業者も、実は自分たちも税負担が増えるケースが有るという事にようやく気が付きはじめるのがこれから数か月でしょう。
免税事業者が多い現状、インボイスが発行されない取引については仕入れ税額控除が出来なくなるため、課税事業者側が負担せねばならないと言う制度設計だからです。
当然の事ですね。
結局、全ての人が不幸にしかならないのがインボイス制度なのです。
※財務省、財界の一部の輸出企業、政権与党議員を除く
みなさんはどう思われますか?