「衣食足りて礼節を知る」という言葉を耳にしたことがありますか?
この言葉は、人々の精神的な余裕と生活の安定が密接に関わっていることを表しています。
難しく聞こえるかもしれませんが、人間の本質を巧みに捉えた表現だと思います。
大多数の人にとって、生活の安定性が社会の雰囲気の形成に大きく影響しているという事を表しています。
個人的にも、生活が不安定になると道徳的な考え方がおざなりになり、自己中心的な思考が増えると感じます。
特に、現在の物価の高騰により生活が苦しくなっている状況では、衣食に困り礼節を考える余裕がなくなる人もいるでしょう。
この記事では、「衣食足りて礼節を知る」の意味、起源、同義語について説明します。
生活が充実して初めて礼節が守れる
「衣食足りて礼節を知る」とは、基本的な生活のニーズが満たされたときに初めて、人々が礼儀正しさや節度を保てる状態になるという意味です。
逆に、貧困や飢餓が倫理感や礼儀を軽視させることが有るという事を、暗に示していると言う事も出来るでしょう。
自分自身の経験からも、日々の生活に追われると他人への配慮を欠くことが多かったと感じます。
この様に、同じ人物であっても精神の状態によって他者との係わり方に差が生まれ、それがコミュニティ全体の空気感に影響を与えると言えます。
「衣食足りて礼節を知る」の起源
この「衣食足りて礼節を知る」と言う言葉の起源は、中国古代の思想家、管仲による『管子』の「牧民篇」にあります。
「倉廩実つれば礼節を知り、衣食足りれば栄辱を知る」と記されており、これは物質的な豊かさが道徳的行動と直接関連しているという古代中国の考えを示しています。
今日でも、この理念は人々の関係や社会的行動を考える際によく引用され、経済的な安定が精神的な余裕をもたらすとされています。
この視点は、その文化的背景とともに理解されるべきです。
生活が充実することで礼節と節度が得られる?
全ての人に当てはまる訳では無いと思いますが、大多数の人にとって生活の充実と礼節や節度には密接な関連が有ると言えるでしょう。
端的にまとめると、自分は以下の様な関連性が有ると考えます。
- 安定収入と財産が心の安定をもたらす(安定した収入や財産がないと、心の平穏も保ちにくい)
- 倉庫が満ちると礼節が身につく(物資が豊富にあるとき、初めて人々は礼儀と節度を学ぶ)
- 貧困が精神的余裕を奪う(貧困状態にあると、精神的な余裕が失われ、礼儀知らずになることが多い)
- 経済的余裕が道徳的な心の成長を促がす
世の中には聖人君子の様な、己の置かれた過酷な状況には影響されず、常に他者を思いやり、配慮する事が出来ると言った人も居るでしょう。
ですが、普通の人であれば、先ずは自分自身の生活に不安が無い状態になってはじめて他者への配慮、寛容、礼儀、節度といった事に思いが至るものです。
裏を返すと、自分自身の生活が不安定な状態では、出来た人物であっても礼節を弁えた行動から外れてしまう、環境がその人の礼儀や態度、作法に良からぬ影響を与えてしまう事が有ると言えるでしょう。
「衣食足りて礼節を知る」を使った表現方法と例文
「衣食足りて礼節を知る」は、経済的な安定が人の精神的な成熟や道徳的成長を支えるということを表しています。
回りくどい説明を端的に表現するために非常に便利な諺と言えます。
では、以下に「衣食足りて礼節を知る」を用いた例文を挙げてみます。
■戦後の再建期には、生活が苦しく、「衣食足りて礼節を知る」状態には程遠い状況だった。
この文例は、生きる為には何だってしなければならない追い詰められた状況だったという事を表しています。
社会情勢として何もかもが足りない状態になると、精神的な成熟や道徳的成長は簡単に脇に追いやられてしまうという事です。
経済的に困窮した社会(国や地域、自治体)は、傍から見た場合、荒んだ様に見える事が多いでしょう。
■経済的支援を充実させると、社会全体の道徳観も向上し、「衣食足りて礼節を知る」と言う状況に一歩近づくだろう。
経済的に追い詰められた人を経済的に支援する事で、ようやく他者への配慮、寛容、礼儀、節度といった事に意識を向かせる事が出来ると言うことを表しています。
自己責任ばかりを問う社会では、経済的に追い詰められた人が増えて行き、「衣食足りて礼節を知る」から大きく外れた世の中になってしまうと思います。
「衣食足りて礼節を知る」は英語でどう表現する
では、「衣食足りて礼節を知る」という言葉を英語で表現するとどうなるでしょうか?
・the poor can’t afford manners
貧しいものは礼節を知ることができない
・only when basic needs for living are met can people spare the effort to be polite
生活するための最低限のものが有って初め礼儀正しくする努力を行える
非常に分かり易く表現されていると思います。
「衣食足りて礼節を知る」についての まとめ
「衣食足りて礼節を知る」という諺は、経済的、物質的、またはその両方の充足が礼儀と節度を持った態度や行動の基となる事が多いということを示します。
この言葉は、個人や社会の行動を理解するための重要な考え方や捉え方を示しているでしょう。
皆さんの日常生活の中で、この言葉を知ったうえで事態を眺める事で、より深く状況を分析し対処する事が出来るようになると思います。
物事の一面だけを見て判断するのではなく、その事態を取り囲む環境や背景全体を観察してみてください。
そうする事で、周囲はあなたを一回りも二回りも心が広い人物として受け止める様になるでしょう。